さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.17
打田漬物 本店
Uchida Tsukemono Honten
昭和15年、島原で創業した打田漬物。「当時は京都市内のいたるところにあった公設市場でのスタートでした」と話すのは、現在3代目となる打田学市(かくいち)さん。代々続いてきた漬物の味を守るために、作業の工程を機械まかせにせず、手作業でしているのだと教えてくれました。「野菜は収穫時期やその年の出来栄えなどで、大きさはさまざまです。それらをどれも同じサイズになるようにカットしないと、漬けあがったときに味や食感にバラつきが出てしまいます。その部分はやはり手作業でないと難しく、膨大な量をカットしないといけないのですが、今も手作業で頑張ってもらっています」
京都島原にある本店。近くには「島原遊廓跡」や重要文化財にも指定されている「角屋もてなしの文化美術館」がある。
漬物に使う野菜は契約農家に届けてもらうほか、初代が三重県出身だったことから、三重に畑を持ち自家栽培もしています。「今は父親が畑担当となり、定番のキュウリやナス、白菜といった野菜を育ててくれています。また、いろいろな種類の野菜を育てて、漬物にふさわしい品種はどれか試作することも。以前はパクチーを栽培して、私が実際に漬物にしてみたのですが、匂いや、量がたくさんできなかったということもあり、断念したこともありましたね(笑)」
パクチーのお漬物!パクチー好きのわたくしとしてはぜひ実現させてほしかったです…!打田漬物では、そうした3代目の豊かな発想をベースに毎月職人さんが新商品を考案。取材に訪れた5月には、レモンが香る「檸檬ぐりーんぼーる」の漬物が店頭に登場していました。
店内に設置されている試食コーナー。20種類前後のお漬物を試しながら、買い物ができる。この並びを見ているだけでワクワク!
「最近は贈答品として選んでいただくことも増えたのですが、元々、漬物は日常で食べてもらうもの。普段の暮らしの中に溶け込むようにあるのが、本来の姿だと思っています」と打田さん。3代目を継いだ25年ほど前から、「これからの時代、漬物は食べ続けてもらえるのだろうか」という危機感があり、漬物文化をすたれさせないためにと、ぬか漬け講座を始めたのが20年前。自身も漬物作りをする中で「ほんまもんの漬物とは?」と常に問い続けながらも、基本はやはり「漬物は家庭の味」という思いがあるのだとか。「千枚漬やすぐきといった代表的な漬物を特別なものとして食すというよりは、浅漬けでもキムチでもいいので、おつけもんがいつも身近な存在であってくれたらと思いながら、作り続けています」
イチオシ商品
京の里
594円(税込)
キュウリ、ナス、みょうがを青じそで漬け込み、醤油風味に仕上げた創業当初からある定番品。食感にこだわって、かなりの重石をかけて作っているため、細かく刻んでもパリパリと小気味いい歯ごたえ。「重石をかけるほど、かさが減ってしまうので、その分原料代がかかってしまうのですが…(笑)」と、おいしさ重視で作られた一品です!
ライター江角の