さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.12
京つけもの 大安
Kyo Tsukemono Daiyasu
平安神宮の南東に大きな店舗を構える「京つけもの 大安」。創業は明治35年と古く、その歴史はなんと2019年の今年で117年。今回は、3代目となる社長の大角安史さんにお話を伺いました。「創業当時は、各家庭で漬物を作るのが当たり前、買うのは恥ずかしいという時代でした。そのため、家の裏口に訪問して販売していたという記録も残っています。ですが、やがて作る時代から買う時代へと変化していくにつれ、生産量も増えていき、会社も少しずつ大きくなっていきました」。
昭和5年、左京区吉田から現在の場所に移転。奥には観光バスも入れる大きな駐車場があり、平安神宮と合わせて寄りたい観光スポットのような存在。
大安は現在、直営店だけでも京都市内に8ヶ所、関西のみならず関東や北海道、九州などなど、各地にお店を展開。創業以来、順風満帆に成長してきたのかと思いきや、「実は一度お店を畳んだことがあるのです」と大角さん。「漬物の売れ行きが伸びてきたことから、ある年初代が京野菜であるすぐきを大量に仕入れたのです。が、その年は運悪く暖冬だったため、仕込んだすぐきが全部腐ってしまって。不運が重なり奥さんも亡くなり、いったんお店は閉めることになりました。ですが、数ヶ月後にまた佃煮や乾物の販売をはじめ、お店を再開したと聞いています」。
意外な歴史に驚き! そんな波乱万丈がありつつも、昭和38年からは宮中への「千枚漬」の献上が始まります。なんと、昭和天皇も現在の天皇陛下も、大安の千枚漬を召し上がっておられるのです!!
私のような庶民も、何とか同じ千枚漬を食べられないのでしょーか!と聞いてみたところ、「別樽仕込みという商品は、宮中に献上する千枚漬と同じ畑の野菜を使い、同じように仕込んであります」とのこと。冬だけの特別商品、ぜひチェックしてみたいと思います!
試食しながら、好みの漬物が選べる広い店内。ズッキーニやキノコといった変わり種も。2018年からは2階で「どぼ漬(ぬか漬)教室」も開講。
さて京漬物というと、京野菜を使った漬物を指すと考える方も多いのではないでしょうか。でも、それはちょっと違います。「京都には、平安の頃から宮中に献上するため日本全国からよりすぐりの食材が集まってきました。それらを京都の職人が手を加えることで、さらに上質なものへと生まれ変わらせる“京もの”という文化があったのです。大安では、その京もの文化を大切に、全国の契約農家さんや市場から旬の野菜を仕入れ、職人が心を込めて漬物に仕上げることを大切に続けています」。
さらに2000年からは合成添加物無添加、天然素材の調味料を使う方針に切り替え、2年かけて完了。新たなやり方に舵を切るのは簡単ではなかったと思います。「時間がかかるとは思いましたが、長い目で見て、本当に良質のものをお客様には提案したいという思いから、踏み切ることにしました」と大角さん。お話を伺うほどに、「安心しておいしい漬物を食べてもらいたい」、そんな熱い思いが伝わってくるようでした!
イチオシ商品
春キャベツ
540円
柔らかく甘味のある春キャベツを和歌山から取り寄せ、天然の出汁で取った調味液に漬けた浅漬け。食べると、シャキシャキとした食感がしっかり感じられ、新鮮な野菜を味わっているような感覚。春キャベツだからこその軽い食感を残したまま漬け込めるのは、職人技があるからこそ。噛みしめるほどに、昆布の旨みも感じられ、サラダ感覚でぱくぱく食べられそう。
ライター江角の