さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.28
田中漬物舗
Tanaka Tsukemonoten
円山公園(八坂神社)と平安神宮のちょうど真ん中あたりに位置する「田中漬物舗」。明治44(1911)年から続く暖簾を守っているのは、現在5代目となる岸義人さんです。「祖父から母、母から私へと受け継がれてきた店は、今年で110周年を迎えます。祖父から直接漬物づくりを習うことはほぼありませんでしたが、祖父が残してくれていた製造ノートが大きな助けとなりました」。
店舗があるのは、東大路通りから少し西へ入った場所。30数年前に、漬物工房があった現在の場所に移転してきた。
店を手伝うようになった当初、職人さんからも学ぶなどして試行錯誤しながら漬物づくりに取り組んでた岸さん。そんな中、野菜についてよく知っておくことが漬物づくりには必要不可欠だと感じ、2001年野菜ソムリエが始まったと同時に資格を取得。野菜を重視する気持ちは変わらず、昨年からは漬物づくりをする仲間と共に、畑での野菜づくりにも取り組んでいると言います。「京都の日吉に畑があり雑草引きをするなど、土作りからやっています。いざやってみると、野菜づくりがいかに大変か実感しました。漬物づくりだけをしていると、農家さんに対して、なんでもっと昔みたいな野菜を作ってくれへんのやって思ってたんですけど(笑)本当に大変なことだとよく分かりました」。
「お客様の中には、食べ続けて3代目になりますと言う方も多く、うちの漬物がお客様の家庭の味になっていることが、本当にうれしいですね」と岸さん。
年間50アイテムの商品が店頭に並ぶ同店。けれど今後は、あえて品数を減らすことも考えていると話します。「祖父は、10人中10人がおいしいという漬物を作るより、10人中3人でいいから、ここのんしかアカンと言ってくれるものを作れと常々言っていました。原料の調達も難しくなっている今、これからは人気商品に力を注ぐほか、遊び心のある、うちでしかできない漬物づくりにも力を入れていきたいと考えています」。
お話を聞く中で、私が特に気になったのが、毎年数量限定で秋頃に販売される「権兵衛漬」。通常、数百円という価格帯が多い漬物ですが、権兵衛漬は価格が2,000円と飛び抜けて高価!それでも岸さんに言わせると「まだちょっと厳しいかな…」という設定だそう。これは酒好きだった先々代が考案した商品で、聖護院大根をすぐき漬けの製法で1年近く寝かし、さらに干し海老や出汁じゃこ、とうがらしなどで漬け込み完成させるというもの。分厚かった聖護院大根が長く漬け込むことで当初の半分以下の薄さとなり、実際に食べてみるとギュッと漬け込まれた分、想像以上にかたく食べごたえ十分!噛めば噛むほどに、大根から旨味が染み出てくるようです。これこそ、田中漬物舗にしかできない漬物づくり…!
漬物離れが叫ばれる昨今、お子さんが小さなうちから食べてもらえるようなアプローチも考えていきたいと岸さん。「私自身、漬物が好きなので、これ食べてや~と自信を持って出せる漬物だけを、これからも作り続けていきたいですね」。
イチオシ商品
なにこれ漬
486円(税込)
元々は、まかないだった漬物を店頭でお客様に試食してもらったところ「なにこれ?いける!」と人気だったことから商品化。昆布の佃煮のようにも見えますが、薄切りしたたくあんを、昆布を炊いた醤油に漬け込んだれっきとしたお漬物。昆布の出汁がきいた旨みのある味とポリポリ食感が絶妙で、我が家でも大人気! 後日また買いに行ったほどでした。
ライター江角の
田中漬物舗
京都市東山区東大路三条下がる二筋目西入る南木之本町536-2
TEL :075-561-2928
営業時間:10:00~17:30
休み:日曜定休https://tanakatsukemono.com/